懐話§昭和三十年代~肥溜め~ [昭和]
[承前]
“田舎の香水”という言葉が存在した……昭和三十年代、実家があった町から郊外に出ると、どこからともなく“あの臭い”が漂ってくるのだった。
そう、肥溜めである。かつては畑の肥料にと、農家の人たちが、町に赴いてきては、家庭の屎尿を集めては、それを掘っておいた穴に入れて保存していたのだ。
田舎を走る電車やバスに乗って、それらしき場所を通る時、必ずといっていいほど、あの臭いの洗礼を受けるのである。
肥溜めは野天掘りで柵の類などまず設置されてなどいないから、時折にしても、はまり込んでしまうおっちょこちょいが現れて、難儀していたようだ。
そんな田舎の香水も昭和四十年代には、徐々に消滅していったと思われる。そうなったのは、肥料の発達であったり、衛生上の問題で、下水道が設備されるようになったことで、屎尿集めはいつしか消えてしまったのである。
[続く]
《昭和のトピックス一覧》
“田舎の香水”という言葉が存在した……昭和三十年代、実家があった町から郊外に出ると、どこからともなく“あの臭い”が漂ってくるのだった。
そう、肥溜めである。かつては畑の肥料にと、農家の人たちが、町に赴いてきては、家庭の屎尿を集めては、それを掘っておいた穴に入れて保存していたのだ。
田舎を走る電車やバスに乗って、それらしき場所を通る時、必ずといっていいほど、あの臭いの洗礼を受けるのである。
肥溜めは野天掘りで柵の類などまず設置されてなどいないから、時折にしても、はまり込んでしまうおっちょこちょいが現れて、難儀していたようだ。
そんな田舎の香水も昭和四十年代には、徐々に消滅していったと思われる。そうなったのは、肥料の発達であったり、衛生上の問題で、下水道が設備されるようになったことで、屎尿集めはいつしか消えてしまったのである。
[続く]
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旨話§豚しゃぶの夜 [酒肴]
2週間か3週間に一度、ちょっと離れたところにあるショッピングセンターに車を走らせて買い出しに行っている。地元のスーパーにはない食材などを仕入れるためである。
そこで当日と翌日の晩ご飯の食材を買うのだが、これはもう決まっていて、焼き餃子と豚しゃぶ用の肉なのだ。そしてお休肝日が餃子定食で、飲酒日に豚しゃぶという流れなのだ。
ショッピングセンターのマーケットには、量り売りする肉屋が入っていて、いい豚肉を売っている……ちょっと値段は張るが。
というわけで、決まった流れに従って豚しゃぶである。老夫婦二人、買う肉の量は200gから230gの間で、それでもう十分である。
付け合わせとして、茹でたモヤシと貝割れを添える。肉の量がその程度だから、食卓でしゃぶしゃぶするのではなく、台所で茹でた豚肉を、貝割れとモヤシの上にのせて食卓に出す。
考えてみれば、昔はそんなことを思わなかったが、このところは、サラダ的だと思わなくもなく、ポン酢や胡麻だれはドレッシングではありませんか。
ほどよく脂分が抜けた薄切りロース肉は、食が進むし、酒も進んでくれる。たぶん、年齢的にも合った食べ物ではないだろうか。
《酒肴のトピックス一覧》
そこで当日と翌日の晩ご飯の食材を買うのだが、これはもう決まっていて、焼き餃子と豚しゃぶ用の肉なのだ。そしてお休肝日が餃子定食で、飲酒日に豚しゃぶという流れなのだ。
ショッピングセンターのマーケットには、量り売りする肉屋が入っていて、いい豚肉を売っている……ちょっと値段は張るが。
というわけで、決まった流れに従って豚しゃぶである。老夫婦二人、買う肉の量は200gから230gの間で、それでもう十分である。
付け合わせとして、茹でたモヤシと貝割れを添える。肉の量がその程度だから、食卓でしゃぶしゃぶするのではなく、台所で茹でた豚肉を、貝割れとモヤシの上にのせて食卓に出す。
考えてみれば、昔はそんなことを思わなかったが、このところは、サラダ的だと思わなくもなく、ポン酢や胡麻だれはドレッシングではありませんか。
ほどよく脂分が抜けた薄切りロース肉は、食が進むし、酒も進んでくれる。たぶん、年齢的にも合った食べ物ではないだろうか。
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