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仏話§シャンソンを聴いていた [フランス]

フランス語など、いくつかの単語くらいしか知らないが、なぜかシャンソンに惹かれてしまった……謎である。



日本語に訳されたその歌詞の、いかにもフランスらしいエスプリがシャンソンの真髄だと気がついたのは、ずいぶん後になってのこと。そして来日した何人かの歌い手のライブに出かけたことがあって、シャルル・アズナヴールに始まり、ジュリエット・グレコ、レオ・フェレといった面々だった。

そんな中で、とりわけ印象深かったのがコラ・ヴォケールとイヴ・モンタンの二人。特にコラ・ヴォケールは、たまたまテレビで放送していた来日公演を見て、こんな歌い手がいるのかと驚いて、その後来日するたびに草月ホールやシアターコクーンなどに足を運んだ。



さらにイヴ・モンタンは、1982年11月に新宿厚生年金で行われたライブに出かけている。二人とも、さり気ない動きで歌の中身を巧みに表現する様子が印象的だった。

そんなイヴ・モンタンが歌ったのが『パリで(à Paris)』である。歌詞の最後あたりには“俺たちがバスチーユ広場を占拠して以来、あちらこちらの大通りやら十字路に、男たちがそして女たちもいて、舗道の上をたえず昼も夜も巡り巡る”と、フランス革命が登場するが、まさに“これぞシャンソン”なのだと思うのである。

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週話§日曜流転~パリ祭~ [フランス]

1789年7月14日、パリの民衆がバスティーユ監獄を襲撃し、フランス革命が勃発した日である。

それを日本ではなぜか能天気に過ぎるとしか思えない“パリ祭”だなどとはいったい誰が名付けたか。もっと血腥(ちなまぐさ)い日であるはずなのに。



翻ってフランスでは、シャンソンの歌詞の中に、そんなフランス革命のエピソードが登場する。フランシス・レマルクがイヴ・モンタンのために作った『À Paris(パリで)』がそれだ。4分ほどの歌の最後に出てくる歌詞は……

パリでバスチーユを俺たちが占拠して以来
あちこちの大通りや十字路に男たちがいて女たちもいて
舗道の上を昼も夜も絶えず巡り巡る

……まさにシャンソンがシャンソンたる、フランスのエスプリを具現化しているようではないか。

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仏話§おフランス~国名に“お”がつく~ [フランス]

赤塚不二夫のギャグ漫画『おそ松くん』に登場する“シェーー!”で有名なイヤミが発した迷言が「おフランスざんす」である。そして、国名に接頭語の“お”が付けられるのはフランス以外に存在してはいない。

おアメリカ、お中国、お南アフリカ、おブラジル……それ以外、どの国名に対して“お”を付けようとしても、まったくそぐわないというか、収まりが悪いとしか感じられないのだ。

いや、無理矢理にでも付けてしまえば、あるいは定着するかもしれないが、フランスに“お”が付いた瞬間、それはもうフランスに対するモードの国、美食の国といった日本人が抱くイメージに覚える嫉妬のようなものの、見事な裏返しの揶揄の感覚を完璧に具現化しているではないか。

そうして“おフランス”なる表現は、イヤミの口から離れて独り歩きを始めた。イヤミが発していた本来のニュアンスは、フランスなる国のハイソサエティ自慢をしていたはずだが、それが長い年月を経たことで、見事に定着してしまった。

いい意味でも悪い意味でも“フランス”という国を象徴的に表現していると思うのである。

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顧話§今日の歴史~三ツ星ですとか~ [フランス]

1900年3月8日、ガイドブック『ギド・ミシュラン』創刊。

車での旅行がトレンドになっていくだろうと見越して、フランスのタイヤ・メーカーであるミシュランがガイドブックを創刊したのが、この年のこの日なのだった。

タイヤ・メーカーとしては、たくさんドライブしてタイヤを擦り減らしてほしいという単純な下心からガイドブック制作を思いついたものだと、そんな程度の動機だろうと思われるが、それがまさか世界的なガイドブックに成長することになるとまでは思わなかったであろう。

そもそもフランス人がグルメぞろいなのかどうかはわからない。旅行するのだから、せめて旅先ではうまいものが食べたいという発想ではないかと、むしろそう思っているのだが、どうだろうか。

うまい食べ物が明らかにたくさんある日本人だって、普段から贅沢な食事をしているはずもなく、それぞれそれなりの三食を食べて過ごしているのだ。

どうやら日本の食事がうまいということに気がついて、ミシュラン東京版が創刊されたのは2008年のこと……その後、少しは日本の料理が世界の人たちに認知されたのだろうか。

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仏話§フランス―マイカテゴリー―行きたしと [フランス]

フランスには一度も足を踏み入れてはいない。この先も行くことはなさそうで、どうやら時間切れのようだ。

そりゃあ、行ければなあと思わないでもなく、まだまだ体力があったと思しき頃には自転車ロードレースの“ツール・ド・フランス”を4、5日くらいレンタカーで追いかけてみようかと思ったこともあったが、ヨーロッパのこのところの猛暑に怖気づいて企画倒れになってしまった。

同居人がバレエ好きなので、一度は本拠地のオペラ・ガルニエでオペラ座バレエの公演を観ることができればとも思っていたのだが、これも実現しそうにない。

元よりグルメの“グ”の字もない夫婦なので、あれやこれやの食事に興味はないが、少なくともドイツ飯よりは旨い物を食べさせてくれるだろうけれど夢のままに終わることだろう。

フランス語などほとんどまったく解することはできないのに、なぜか昔からシャンソンが好きで、女性ではコラ・ヴォケール、ジュリエット・グレコ、男性はシャルル・アズナヴールやイヴ・モンタンのリサイタルに出かけては彼らの歌を堪能してきた……言葉がわかれば、もっとシャンソンが持つエスプリを楽しめたのに。

我がフランスなるものは、まあこんなところである。

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