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精話§世界文学全集 [小説]

父親が“少年少女世界の名作文学”全50冊を買ってくれたのは、小学校に入るタイミングだったと記憶している。

自宅に本は少なく、まとまった全集はこれが初めてのことで、まあまあ好奇心があったようで、家に届いたところでせっせと読み始めることになった。

世界のと謳ってはいるが、日本の“文学”も何冊か入っていた。夏目漱石の『坊つちやん』やら『太閤記』みたいなもので、いずれにしても原文ではなく、子どもが読みやすいように翻案がなされているものだ。

さらに“世界”のとなると、これが多彩で『飛ぶ教室』に始まって『長靴下のピッピ』から『ビーチャとゆかいな仲間』とか『クオレ』といたものまで小学生の感性などたかが知れてはいるが、それでも“それなり”の感性で読み進んでいったようである。

そんな50巻全部を完読したわけではなく、何冊かは途中で放り出してしまったものある。たぶん、読んでいてストーリーが悲劇的だったり、可哀そうと感じたものは、先に読み進む気力がなくなってしまったのかもしれない。

そんな文学全集は小学校で卒業したが、小説の類に興味を持たないままに、読む本といえば、科学的な読み物だったり、そうした実用書の類だったり、そんな方向に進んでいったのだが、読書量が多かったとは言えないだろう。

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異話§読んだ本の内容が・・・・・・変化している [小説]

恐れ知らずにもトーマス・マンの小説を読んだことがある。最初に読んだのは『魔の山』で、こいつは途中で訳がわからない問答が始まって、まじめに読んでも理解できそうにないと、その場面は完全にすっ飛ばして、何とか読了に漕ぎつけた。どれほど理解できたかはわからない……というか、理解したうちには入ってなどいないだろう。

2冊目に『ブッデンブローク家の人びと』を読んだ。北杜夫の『楡家の人びと』は、この小説に触発されて書かれている。

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一つの家族の興亡を描いた年代記的小説ということで、こっちのほうは、それほど苦労せずに読み通すことができた。

おかしいのは、その先である。読了からずいぶん経った頃、もう一度読み返してみようかと2回目を読み始めたのだ。読みながら、おかしい……何だか筋が変わっていやしないかと。だが、最初に読んだ時と、まるでストーリーが違っていたのだ。

今さら、どこがどう違っていたのか説明することなどできないが、これほど記憶と齟齬をきたしたのは初めてのことである。というわけで、記憶の悪戯による、何とも珍妙な自分的騒動のお粗末。

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仇話§木挽町のあだ討ち [小説]

2023年上期の直木賞受賞作であり永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』を読了。

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文学賞受賞作品だからいつも読むというわけではないが、江戸の芝居小屋を舞台にしたというところに興味を惹かれ、迷うことなく手に取った。

二日ほどで読了したが、芝居小屋とそこに生きる人と“あだ討ち”を果たそうと奔走する若い侍の交流が描かれている。

本編は、あだ討ちから2年後に一人の侍が芝居小屋を訪れて、あだ討ちの経緯を芝居小屋の人たち一人一人に語らせるという……一人に聞いては次の人へと、さしづめ『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』というところか。

とにかく人物描写に一日の長があると感じた。芝居小屋の人たちの暮らしが手に取るように浮かび上がってきた。そして“聞き取り”重ねるうち、ある違和感が……

……実は、最終章に差しかかるあたりで結末らしきものは見えるようになってしまった。そのあたり、作者が意図して匂わせていこうとしていたのか。あるいは、そのあたりの詰めについては、もう一工夫必要だったかもしれない。じゃあどうしたらと急に言われても困るのであるが。

そうは言っても読後感はすっきり爽やかで、良質な小説を読ませてもらったのは言うまでもない。

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籍話§本を読み始める時は・・・・・・ [小説]

読書量は少ない。仕事で本を読む機会が多かったからかどうか……あまり、読まない理由とか言い訳にはならないが。

まずもって第1ページから読み始めることが、超億劫だったりする。なぜ億劫なのかは自分でもよくわかっていないが、一つ考えられるのは、初対面と似たようなところがあるからではないか。

1ページ目の1行目の書き出しがどのようになっているのか……そのことを考え出すと、初対面に臨むことが面倒になってきてしまうのだ。これはもう単なる天邪鬼なだけであろう。

とにかく最初の数ページさえ乗り越えれば、何とか読み続けることができるのだが、これが自分にとってはなかなか厄介なハードルだったりするのだ。

そうしてペースが掴めたら、あとは速い。もっとじっくり文章を吟味しながらと言われるかもしれないが、それよりは文章の流れに合わせて、時には飛ばし気味なくらいのスピードで詠み進めていく。

もちろん、文章が意図するところが見えなければ、そのあたりはじっくりと遅いテンポでもって、文章を理解するべく眼を通していくのである。そしてそんなやり方で読める小説も少なくはないが、時としてお手上げ……即行で放り出してしまいたくなる小説もままあったりはするが。

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幻話§白い世界~他に色がない~ [小説]

昔々、少年漫画週刊誌に短編SFが連載されていたことがある。小学生にもわかりやすく書かれていて、漫画の合間の佳き読み物になってくれていた。

そんなSF小説の中に“色のない世界”をテーマにした一作があって、これはなかなかによくできていた作品だったと思う。

ある日、我々の世界から色が消滅して、何もかも真っ白になってしまったというストーリーだが、その中で強調されていたのが食べ物に関する記述で、何もかもが白いがゆえに“食べ物の味が感じられない”とあって、子ども心に「そりゃそうかもしれない」と納得したのだ。

それこそ、真っ白い海苔、真っ白い(当たり前だ)ご飯、真っ白いマグロの鉄火巻ってどうよ?ではないか、そして醤油も白いときたもんだ。そして……真っ白いほうれん草のお浸しだったり、真っ白いさくらんぼやブルーベリーなどなど、ちょっと想像をするのが難しくなっていった記憶がある。

現実に、色が味を影響させることがあるのは、まさにホワイトチョコレートがそれでまないか。そしてホワイトチョコレートは今だに苦手だったりしているのと、さらにこれはつい最近のことだが、紫色のじゃがいもを食べたことがあって、味は間違いなくじゃがいものそれなのだが、色とのギャップに戸惑ってしまった。

げに、色と味とは密接な関係が厳然と存在しているのだ。

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