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浪話§藤山直美~松竹新喜劇~大阪ぎらい物語 [舞台]

先週の土曜日、藤山寛美三十三回忌追善喜劇特別公演と銘打たれた松竹新喜劇の公演を観てきた。

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一、『愛の設計図』
二、〈映像〉藤山寛美 偲面影
三、『大阪ぎらい物語』
   藤山直美ご挨拶相勤め申し候

芝居二つの間に、藤山寛美在りし日の映像を挟んで、一本目『愛の設計図』は、1951年の初演だが1970年の大阪万博に時代を移して当時の世相を背景にした舞台だったが、若い部下を育てようと理不尽に厳しくあたる上司の図とは、今時であればパワハラの誹りを免れず、なるほど、テーマが古びたことを痛感する。上司役の渋谷天外(三代目)も存在感があるわけではなく、冗長な芝居と感じたのである。

寛美の映像の後の『大阪ぎらい物語』が見ものだった。主役は言うまでもなく藤山直美。頑固な母親に大津嶺子、後見の叔父(伯父)を林与一。

大店の娘が、手代との身分違いの恋を成就させようと奮闘する人情喜劇で、2008年にも一度観ている。今回の藤山直美は、7月10日から4日間の休演明け直後だったからか、小気味よく反射神経抜群の台詞回しが冴え渡り、脇の役者まで笑いの渦に巻き込むほどのパワーを見せつけたのだった。

前回観た時も、おもしろかったのは言うまでもないことだが、今回はひと味もふた味も違って見えたのである。

終演後、再び幕が上がり、舞台中央に藤山直美が一人、三十三回忌追善の挨拶があった。何とも充実したお芝居を堪能したが、この先の松竹新喜劇がどうなっていくものか、それが気がかりな関東人だった。

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踏話§舞台―マイカテゴリー―優れた踊り手 [舞台]

3つの異なる踊りのジャンルに、二人の優れたダンサーが同時に存在したことがある……ジーン・ケリーとフレッド・アステア、バレエのパトリック・デュポンとマニュエル・ルグリ、歌舞伎の中村勘三郎(十八世)と坂東三津五郎(十世)といった面々だ。

それぞれ前者は豪放だったり奔放だったり、後者は端正で洗練されていると芸風も対象的である。

ダンスの二人は映画の画面でしか観たことはないが、デュポンとルグリ、勘三郎と三津五郎の舞台は観ることができた。とりわけ、勘三郎と三津五郎が共演した『棒しばり』の水も漏らさぬ丁々発止のやり取りが楽しく、終わることの何と惜しかったことか。

三組の“ダンサー”たちは、疑いもなく踊ることを楽しんでいて、それが観ている我々にも伝わってくる。難しい技巧を軽々とこなしはするが、彼らはその難しさを観る人たちにひけらかすようなことはしない。

そうした技巧を会得するまでの苦労などを見せることは、決してないのだ。

そうして勘三郎と三津五郎の幸福な出会いの時間は短くて、彼ら二人は既に鬼籍の人となり、あの屈託のない舞台を観ることは叶わないのだ。何という損失なのかと、相も変わらず死んだ人の歳を数えるのである。

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