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享話§武満徹―マイカテゴリー―現代音楽 [武満徹]

東京で暮らし始めた1973年の初夏、渋谷公園坂を上がったあたりで武満徹を見かけたことがある。同じ時期に目にした人には、かまやつひろしと俳優の天本英世がいて、3人が3人とも雰囲気ある強烈な個性の存在なのだった。

武満徹が作曲した音楽の実演を聴いたのは確か5度……NHK交響楽団の定期公演で『カトレーン』と『マージナリア』を、フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルで『ガーデン・レイン(雨の庭)』を、そして水戸室内管弦楽団の演奏で『弦楽のためのレクイエム』を聴き、最後が1995年に京都コンサートホールでウィーンフィルの演奏で聴いた『ヴィジョンズ』というものだ。

これまでに書いたとおりで、現代音楽に耳が開かれているわけではないので武満の手になる音楽の1%すら理解できることはなく、不思議な響きの空間に“ぽつねん”といたに過ぎない。

辛うじて、評論家山根銀二が初演の時に「音楽以前」と評した『弦楽のためのレクイエム』のみが、我が耳にもしっくりきた記憶が残っている。

同時代の人間の手になる音楽を十全に聴き込むことができなかったのは、自分の力不足であることは歴然としているが、目の黒いうちに何か聴こえてくるものが少しでもあってくれればと思っているのだ。

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