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週話§土曜流転~カステラと日本茶~ [和菓子]

先月、ショッピングセンターの福引で当たったカステラを食べた。何とも本当に久しぶりなことで、カステラが食べたいとわざわざ買うことなどないと気がついた。

カステラが嫌いなわけではないが、YックMックとか何とか屋のクッキーのように、頂き物としていただくような類のものという認識か。

それはともかく、久々に食べたカステラは、あっさりとしておいしかった。最初は紅茶で食べたが、その次は日本茶を淹れた。

何というか、紅茶より日本茶のほうがカステラには合っているように感じたのは、我々にとってのカステラは、洋菓子よりもむしろ和菓子に寄っているような捉え方をしているからなのか。

ちなみに、我が家の“本家”は、町で一番大きい和菓子屋なのだが、そこではカステラも作って商っていた。時折だが、遊びがてら店に顔を出すと、かわいがってくれた大伯母(祖母の姉)が、成形した残りのカステラの端切れを袋に詰めて持たせてくれたのだが、これが本体よりも圧倒的にうまいという優れ物だったのである。あれこそ今でも食べてみたいものだ。
 
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週話§土曜流転~水無月六月ですよ~ [和菓子]

気が早いかどうかはわからないが、既に和菓子屋には“水無月”が麗々しく並べられている。

↓ウィキペディアより
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だが本来は、京都で行われる6月30日の夏越の祓に合わせて食べられるもので、一年の半分が過ぎ、残る半年も無病息災で過ごせますようにと祈念する菓子なのだ。

デパ地下の京菓子の店で初めて買った時は、そんなことなどもわからず、単に季節物だからと買い求めたに過ぎなかった。いかに、季節季節のあれやこれやに疎いことかとしみじみ思ったのである。

まあ、固いことは言わずに菓子を楽しめばいいではないかとも思うけれど、そこは古い人間でもあるから、せめて由来くらいは知っておくほうが、少しばかり得をしたような気になってくれるようではないか。

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和話§せんべい十枚30円 [和菓子]

奥まった路地裏の実家から裏通りに出ると、小規模な商店街があった。和菓子屋や酒屋、米屋、肉屋と並んでいる中に手焼き煎餅の店があって、生地から自家製造し、店で焼いて売っていた。

店先には、縦長のガラスケースが10個ほど並び、その上には金魚鉢のようなガラスの器が3つほども置かれて、それぞれ焼きたての煎餅が入っていて、香ばしい醤油の匂いを漂わせつつ客を待っていたのだ。

十枚30円、あるいは三枚10円といった値付けで、子どもの小遣いでも十分に買えたのである。もちろん、三枚10円というのは一番安い、プレーンな堅焼き煎餅で、海苔を巻いたやつとか、胡麻煎餅は値段が高くなってしまって、手が出せず、親でも買ってくれれば口に入ることはあったが、稀であった。

そんな煎餅屋の裏には、小さな物干し台のようなスペースがあって、そこに金網が置かれて、真っ白い煎餅の生地を乾かしていたのだ。ちょっかいを出してみたい悪戯盛りのガキではあったが、そうしたものに手を出すものではないと、自然に自覚していた節はある……昨今の回転寿司屋や牛丼屋の騒ぎで炎上するようなことはなかった。

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甘話§祖母の実家は和菓子屋 [和菓子]

父方の祖母は、小田原の在から北関東外れの町へ流れてきた宮大工の祖父にどうもナンパされたようで、結婚する前に父の姉(伯母)を産んでしまったという弾けっぷりだった……今からちょうど百年前のことである。

祖母の実家は、その当時は知らないが、我が身が生まれた時には、町で一番大きい和菓子屋を営んでいて、彼女の姉妹兄弟の数も多く、何人いたのか正確には知らないのだ。

そんなおかげで、幼かった身にとって親類筋の和菓子屋は、ありがたい存在なのだった。

時たま店に顔を見せると、大伯母が喜んで色々とお菓子を食べさせてくれたのだが、一番にうれしかったのは洋菓子も作っていて、そんなカステラの切れ端を袋一杯にもらうことだった。この時、カステラは本体よりも切れ端のほうがうまいことを知ったのである。

かくして、酒が呑めない未成年の頃はそこそこに菓子好きだった。それで、大学4年の就活の時期に、何を血迷ったかわからないが、ふと和菓子好きが首をもたげて、老舗和菓子屋に応募してみようかなどと……結局は実行に移すことなく終わったけれど、あるいはそんな仕事に携わってきたかもしれなかったのだ。

追記:なお祖父は、とんでもない大酒呑みであったらしく、朝からぐびぐびというのも珍しくはなかったようで、ある日軽く咳払いをした途端に、脳の血管が切れてあっという間に死んでしまったと……父が10歳くらいの時のことである。

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週話§日曜恬淡~亥の子餅(ゐのこ餅)~ [和菓子]

11月のはじめ、新宿まで用事に出た折、デパ地下で商いをしている京都の和菓子屋に亥の子餅(ゐのこ餅)があるのを見つけたのでいそいそと購入した。

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といっても、亥の子餅の存在を知ったのは、つい最近のことで、無病息災を願って亥月亥日の亥の刻に食べるようだ。平安時代まで時を遡れば『源氏物語』の“若紫”に亥の子餅が登場してくるので歴史は深い。

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詳しいことは上の能書を読んでいただきたいが、この日は茶道の“炉開き”でもあり、茶道の一年のはじめということのようだ。

そして、見た目よりはあっさりとした優しい味わいの京菓子だった。

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