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三話§国立劇場閉館の件 [伝統芸能]

10月一杯で、隼町の国立劇場が“建て替え”のため閉場した。1966年に完成した建物は“校倉造り”を模した瀟洒なデザインである。これが壊されて、高層ビルになるという将来に、寒々しいものを感じさせる。

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外観はそのままに、内部を大幅にリノベーションすればいいと思うのは、無理な話なのだろうか。欧米の歌劇場などは、舞台機構などを新しくしたりして、外観はそのままに活かす方策を取っているではないか。

何かというと建て替え建て替えと“利権絡み”ぷんぷんな昭和的やり方は、いい加減やめてほしいものだ。

ただ、詳しい理由はわからないが、現時点で2回行われた工事業者の入札が2回とも不調に終わるという、異常事態が起きている……ただでさえ文化事業に冷淡な現政権ゆえ、工事予算をケチっているという話も聞いていて、この状況で、先々どうなるものかは不透明そのものである。

そして、このままでは我々のような世代が眼の黒いうちに生まれ変わった?国立劇場の入口をまたげるものかもわからない。

自分たちの都合で文化支援を不安定な状況にしておいて、日本の政治家の低レベルさが如実に理解できるというものだ。

今からでも遅くない。校倉造りの外観はそのままに、内部を生まれ変わらせるほうが、お客さんは喜ぶに決まっている。

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叩話§歌舞伎座特撰講談会~松鯉と伯山~ [伝統芸能]

十月大歌舞伎第一部に神田松鯉口演で赤穂義士外伝『荒川十太夫』という芝居が出る。それに先立って、歌舞伎座特撰講談会と銘打たれた会が歌舞伎座で催された。折しも神田松鯉傘寿の誕生日だそうである。

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元より講談を聞いたことはほとんどないが、松鯉に加えて神田伯山も出演するというところに喰いついた。こんなことでもなければ伯山の高座に接することはできそうにない。

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さて当日。開口一番は女性講談師神田鯉花の『柳沢昇進録・将軍饗応』から始まった。前座から二つ目に上がったばかり……舞台度胸はともかく、さすがにあれもこれもまだまだとしか言えず。

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そうしてお目当ての伯山が花道から本舞台へと登場。まさに“講談の今”を象徴化するような存在と感じた。盛りだくさんなマクラは、あたかも落語を聞いているようで、アップル・ウォッチに装備されているSiriが熱演している伯山の叫び声に反応して「どうされましたか~!?」と絶叫したという……講談師のお話です。そしてマクラたけなわで一階席の盛大なクシャミでまた盛り上がるのもまた伯山かな。

さて本編赤穂義士銘々伝『安兵衛駆け付け~安兵衛婿入り』が、一時間超の熱演。エネルギーがほとばしり出るように一気呵成に畳みかけていく様は、まさに旬の芸人を見る思いである。口跡も崩れていくことはないし、張り扇使いも巧みと感じた。好悪は分かれる講談師だろうが、そのサービス精神は時に十八代目勘三郎を彷彿とさせた。

松緑を加えての鼎談は、さほど印象に残らないまま、休憩後に松鯉の一席。赤穂義士外伝『荒川十太夫』は、泰然自若として悠揚迫らず。伝統芸能としてあるべき講談の姿を見る思いがしたが、刺激には薄く、講談の姿は守れても、次の地平を目指せるのは伯山のような才能であると痛感させられたのである。

終演は17時……予定時間を30分オーバーし、夜の部の開演までは一時間……そうしてさらに、夜の部は終演予定20時半が21時10分となったようだ。

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古話§伝統芸能―マイカテゴリー― [伝統芸能]

本格的に歌舞伎見物に通うようになったのは2002年……四十代も終わり近くなってからのこと。遅ればせながら観に行けば、これがおもしろい。しまった!もっと早くから行っておけばよかったと思っても、遅かりし由良之助。

歌舞伎が一人一人の役者の円熟を見届けるものであるとするならば、20年足らずの鑑賞歴では到底間に合わず、せめては三十代の初めあたりから観ていれば、六代目歌右衛門や二代目松緑、十七代目勘三郎を眼にできたのだが。

というわけで、日本の伝統芸能に親しむためには何が必要なのかといえば、自分とともに生きていく役者とその芸なのであると痛感したのだった。

そんな伝統芸能だが、今のところは歌舞伎程度で収まっている。他の、例えば文楽も行かないわけではない。年に一度程度は国立小劇場におもむいてはひとしきり観るのだが、これは歌舞伎以上に難物で、年一といった頻度では歯が立ってくれない。というわけで、現在は“保留中”といったところだ。

もう一つ、能と狂言については、四半世紀くらい前に一度だけ公演を一通り観たことはあったが、途中から何が何だかわからなくなって、これはもう、狂言はともかく、能はこれ以上観ても、死ぬまでわからないと思った。

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