踏話§舞台―マイカテゴリー―優れた踊り手 [舞台]
3つの異なる踊りのジャンルに、二人の優れたダンサーが同時に存在したことがある……ジーン・ケリーとフレッド・アステア、バレエのパトリック・デュポンとマニュエル・ルグリ、歌舞伎の中村勘三郎(十八世)と坂東三津五郎(十世)といった面々だ。
それぞれ前者は豪放だったり奔放だったり、後者は端正で洗練されていると芸風も対象的である。
ダンスの二人は映画の画面でしか観たことはないが、デュポンとルグリ、勘三郎と三津五郎の舞台は観ることができた。とりわけ、勘三郎と三津五郎が共演した『棒しばり』の水も漏らさぬ丁々発止のやり取りが楽しく、終わることの何と惜しかったことか。
三組の“ダンサー”たちは、疑いもなく踊ることを楽しんでいて、それが観ている我々にも伝わってくる。難しい技巧を軽々とこなしはするが、彼らはその難しさを観る人たちにひけらかすようなことはしない。
そうした技巧を会得するまでの苦労などを見せることは、決してないのだ。
そうして勘三郎と三津五郎の幸福な出会いの時間は短くて、彼ら二人は既に鬼籍の人となり、あの屈託のない舞台を観ることは叶わないのだ。何という損失なのかと、相も変わらず死んだ人の歳を数えるのである。
《歌舞伎のトピックス一覧》
それぞれ前者は豪放だったり奔放だったり、後者は端正で洗練されていると芸風も対象的である。
ダンスの二人は映画の画面でしか観たことはないが、デュポンとルグリ、勘三郎と三津五郎の舞台は観ることができた。とりわけ、勘三郎と三津五郎が共演した『棒しばり』の水も漏らさぬ丁々発止のやり取りが楽しく、終わることの何と惜しかったことか。
三組の“ダンサー”たちは、疑いもなく踊ることを楽しんでいて、それが観ている我々にも伝わってくる。難しい技巧を軽々とこなしはするが、彼らはその難しさを観る人たちにひけらかすようなことはしない。
そうした技巧を会得するまでの苦労などを見せることは、決してないのだ。
そうして勘三郎と三津五郎の幸福な出会いの時間は短くて、彼ら二人は既に鬼籍の人となり、あの屈託のない舞台を観ることは叶わないのだ。何という損失なのかと、相も変わらず死んだ人の歳を数えるのである。
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歌話§ショパン―マイカテゴリー―前奏曲集 [ショパン]
小学校の音楽室に並んでいた作曲家の肖像の中にあって繊細そのもの表情を見せていたショパンを“ピアノの詩人”という表現は、あながち外れていないでもなく、彼の音楽にロマンを感じることが多いのは頷けるものである。
そんなショパンのピアノ曲の聴き初めは、ご多聞に漏れず幻想即興曲やら、子犬のワルツなどいくつかのワルツ、英雄ポロネーズに“あの”ノクターンあたりだったが、長じるに従ってよく耳にするようになったのは、24の前奏曲集や作品10と25の練習曲集だろうか。
とりわけ前奏曲集に惹かれたのは、ドイツ生まれのピアニストであるクリストフ・エッシェンバッハが演奏した録音に興味を持ったからだった。とりわけ“ショパン弾き”ではない――ショパンの録音はこれ一つだけ――がゆえなのかどうか、センチメンタルでもロマンチックでもない、不思議な魅力を秘めた音楽だったからか、聴き飽きもせず頻繁に聴き続けてきたのだ。
もう一つ、2つの練習曲集はエッシェンバッハの前奏曲集の一年後、1972年にマウリツィオ・ポリーニが録音した衝撃的な一枚にとどめを刺しておく。作曲家が「どうだ弾けるか? 弾いてみろ!」と提示した楽譜から、苦もなく圧倒的な音楽を展開してみせたポリーニの力量に舌を巻くしかなかった。
彼らの演奏を聴いていると、ショパンが軟弱なだけの作曲家ではなかったと理解できるのである。
《ピアノのトピックス一覧》
そんなショパンのピアノ曲の聴き初めは、ご多聞に漏れず幻想即興曲やら、子犬のワルツなどいくつかのワルツ、英雄ポロネーズに“あの”ノクターンあたりだったが、長じるに従ってよく耳にするようになったのは、24の前奏曲集や作品10と25の練習曲集だろうか。
とりわけ前奏曲集に惹かれたのは、ドイツ生まれのピアニストであるクリストフ・エッシェンバッハが演奏した録音に興味を持ったからだった。とりわけ“ショパン弾き”ではない――ショパンの録音はこれ一つだけ――がゆえなのかどうか、センチメンタルでもロマンチックでもない、不思議な魅力を秘めた音楽だったからか、聴き飽きもせず頻繁に聴き続けてきたのだ。
もう一つ、2つの練習曲集はエッシェンバッハの前奏曲集の一年後、1972年にマウリツィオ・ポリーニが録音した衝撃的な一枚にとどめを刺しておく。作曲家が「どうだ弾けるか? 弾いてみろ!」と提示した楽譜から、苦もなく圧倒的な音楽を展開してみせたポリーニの力量に舌を巻くしかなかった。
彼らの演奏を聴いていると、ショパンが軟弱なだけの作曲家ではなかったと理解できるのである。
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