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懐話§昭和三十年代~ドブ川~ [昭和]

[承前]

小京都と呼ばれるような町の通りに流れているようなきれいな水の用水とかではなく、どうってことのない家庭から出るような水なども取り込んで流れていく、まさに“ドブ川”が町のあちこちに流れていた。

裏通りにあった我が家の近くにも1m足らずのドブ川があったが、風情の欠片などもなく、単に生活汚水が流れていただけのことである。

あるいは、町の基幹産業だった織物関連の染色工場からの廃水を流すのが目的だったのかもしれないが、公害の“こ”の字の認識もなかった60年前のことゆえ、浄化などほとんどせずに垂れ流ししていたのは間違いないだろう。

あまつさえ、我が家近くのドブ川には精肉店裏の作業場が面していて、時に鶏を捌くこともあった。鶏を締めては、大鍋一杯の熱湯の中に放り込み……などという作業を延々としているのを、近所のガキ共が眺めているという、今考えればとんでもない状況が日常としてあったのだ。

我がドブ川はそこから数十m先で暗渠となり、支流に流れ込んだ先は本流へと繋がっていったのである。もちろん、そんな目に見えていたドブ川は、気がつけば影も形もなく、地面の下の存在となってしまっていたのである。
                               [続く]

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