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懐話§昭和三十年代~実家とその周囲~ [昭和]

[承前]

大通りと裏通りの狭間、まるで江戸時代の裏店といってもいいような三軒長屋に実家があった。どちらの通りに出るにも、二人がすれ違えない狭くて舗装されていない道を数十m歩く必要があるのだ。

表通りのほうに出ると、出てすぐ右には東京の百貨店の出張所があったが、物品を販売するのではなく、地元特産の織物を仕入れるための出張所で、他にも2軒、百貨店の出張所があった……今は既に存在していない。

大通りを左に歩き、交差点を渡った角には丸に髙の字の、当時としては2階建てで小規模な百貨店らしきものがあって、日用雑貨や玩具などを商っていた。そしてそのあたりは、町で一番の商店街が連なっていたのである。

さて、裏通りのほうへ出ると、すぐ左が肉屋で右が米穀店、その並びには、月一で通っていた理髪店があり、隣には和菓子屋があって、年の暮になると賃餅を頼んでいたのは、決まってこの店だった。

理髪店の向かいには間口一間半ほどの駄菓子屋があって、おばあさん一人で店をやっていた。近所の子どもたちのたまり場みたいなもので、夏になればかき氷なども出したりしていて、ここで小遣いが吸い上げられていたのだ。

裏通りに沿って、3軒の映画館があって、それぞれ東宝、日活、洋画と棲み分けて上映をしていたが、一番に通ったのが東宝系の映画館であったことは言うを待たない。

裏通りの今は、空き地は駐車場ばかりと化して、往時の面影はまったくないが、我が脳裏には当時の様子が鮮やかに脳裏に浮かび上がるのである。
                               [続く]

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