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街話§神保巷塵[82]幻のタカオカのカレー [カレー]

[承前]

“カレーの街”としてすっかり定着した感のある神田神保町だが、すっかり歴史の中に埋もれてしまった一軒のカレー屋を紹介しておきたい。

店の名前は“タカオカ”で、前名を“VANカレー”と称していたのだが、トラッド・ファッション・ブランドの名前と同じだったからか、ある日改名していたのだ。

場所は、神保町1丁目南側、靖国通りとすずらん通り間の細い路地、一誠堂書店の真裏にあった。

ランチタイムのみで、カレーは3種類――ポーク、チキン、ビーフ――で、400円だったか500円。昼時は常に満員なのは、言うまでもなくうまかったからである。

おそらく大量の玉葱をじっくり炒めて、それに肉を合わせただけのシンプルなものだったが、一度食べたら二度三度と食べたくなるようなカレーだったのだ。

そんなカレーのうまさを引き立てていたのが、テーブルにどんと置かれた、いくらでも食べ放題のキャベツの酢油和えで、この組み合わせが1コインで食べられたのは奇跡といってもいい。

そんなタカオカがひっそりと閉店したのは1990年代前半のことだったと記憶しているが詳細は定かではない。ある日、気がついたら閉店していたのだ。

インド風でもなく、欧風でもなく、どちらかといえば日本的なカレーだったと思うが、返す返すも、もっと食べておくべきだったと後悔するのである。

今でも時折、何かないかとネットを検索するのだが、タカオカについて書く人は何人かいるものの、写真の一枚すら残っていないのは、まだまだそんな時代だったということか。
                               [続く]

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