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滞話§写研という会社ありき [インターネット]

“ありき”とタイトルに書いたが、もちろん会社は存在している。だが、今のネット社会から大きく後れを取ってしまったという意味では“ありき”と書いてしまいたくもなる。

20世紀が終わる頃まで、印刷物は写真植字(写植)で文字打つのに、下の写真のような文字母型に光を当て、印画紙に文字を焼き付けて“版下”を作成していた。

↓ウィキペディアより
Shaken_subplate1.jpg

宮仕えを始めた頃、既に活版印刷の姿はなく、写植が主流だった。そんな写植のフォントや写真植字機を製作して販売していたのが写研で、モリサワというもう一社が日本の写植メーカーだったのである。

もっぱら写研の植字書体を使っていて、以下のようなフォントに慣れ親しん
でいたのだ。

↓石井明朝体
MMOKL.jpg
↓ナール書体
nar.jpg
↓ゴナ書体
NAG.jpg

まず石井明朝体だが、中でもMM-A-OKLという略称の石井中明朝体オールドスタイル大がなを基本として、すべての中心に置かれていた。それから70年代にデザインされたナールや、80年代初期のゴナなどを組み合わせていた。

写研フォントは何よりシンプルに姿がよくて、モリサワ書体の泥臭さとは好対照で、写研フォントで仕事をするのが楽しかったのである。

だが、そんな順風満帆だった写研を揺るがすことになったのが、DTPと呼ばれる“デスクトップ・パブリッシング”とインターネットなのだった。

DTPは、デザイン作成したテキストデータを入力すれば組版が出来てしまうというもので、これで校正作業が一手間省けたりと、そのメリットは大きかったのだ。

そして何と、写研がDTPとインターネットに乗り遅れてしまった。それは創業者一族が、頑としてDTPやインターネットに自社フォントを公開しなかったのである。

そのあたり、少しでも知識のある人なら気がつくだろうが、パソコンで使われているフォントの中に写研のそれはまったく存在していない。あまつさえホームページすら開設されておらず、ようやく公開されたのは創業者一族の社長が逝去して3年後の2021年だったが、公開されていない写研フォントを使うために、一風変わったデザインとなっているのだ。

そんな写研の迷走だが、およそ四半世紀以上後れた2024年、ようやくフォントの提供を始めることになったが……何とも遅過ぎる。

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