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苦話§灰汁も味のうち [クラシック]

宮仕え時代、上司に連れられて食事に行った。鍋物を注文して、それを火にかけると、気を利かせるべく表面に浮かんだ灰汁(あく)を掬い取る人がいるのは珍しいことではない。

その時、鍋奉行と思しき上司が一言「灰汁も味のうちなのだよ」とか何とか言ったので、そのまま灰汁を掬わずだった。

灰汁を悪者扱いして取り除くべきか、取らずにそのまま食べてしまうべきなのか、あれこれ調べてみたらケース・バイ・ケースのようだ。

……話変わって“音楽”である。特に、様々な種類の楽器が一斉に鳴り出すオーケストラを聴きながら「音が濁っているなあ」などと感じる時がある。ただし、これもまたケース・バイ・ケースで、一流と言われるオーケストラが、夾雑物を含んだ演奏をするなら、それもまた楽音としての味わいであると感じないでもないが、そこまで技術が到達していないオケの場合は単なる雑音としてしか届いてくれない。

夾雑物として目に立ってしまえば、それは台無しであろう。トップクラスのオーケストラは、灰汁の類もまた音楽の味わいとして表現できてしまう。

いつだったか、NHK交響楽団が新国立劇場のオーケストラピットに入ってワーグナーの『ニーベルングの指環』を演奏したことがあったが、その時、年配の聴衆が二人「N響の音はきれいだねえ」とか話し合う声が聞こえた。

昔ながらのN響定期会員だったかもしれぬが、おそらくは彼らのような人たちが、ある意味で雑味も癖もないN響の音を望んでいたがゆえの結果ではなかっただろうか。個人的には、もう一味ほしいと思っているほうなのだが(個人の感想です。

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