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鍵話§ピアノを聴く~ウィーン~ [ピアノ]

ピアノは難しい楽器だとしみじみ思う。どう聴いたらいいものか、基本的にわかっていない。タッチのニュアンスやら、ペダルの効果といったことに始まって、それらをまったく聴き分けられないままである。

もちろん、シュタインウェイ、ベーゼンドルファー、ヤマハといったピアノメーカーごとの違いなどもわからない。

ずうっとわからないままで終わるかと思っていたら、一つの演奏会を聴いたことで、ほんの少しピアノが奏でる音楽の一端を理解できたような気がしたことがあった。

1992年10月、ウィーンに一週間旅行した時のことである。目的はワーグナーの『ニーベルングの指環』序夜『ラインの黄金』の新演出上演を観るため。それ以外には特に予定もなかったが、気まぐれに楽友協会ホールのチケット売り場を覗いたら、アルフレート・ブレンデルのピアノ・リサイタルが行われるとあって、それはそれはとチケットを確保したのだ。

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謳い文句を見ると、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲シリーズ第1回ということで、プログラムは以下のとおり。

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当日、チケットは売り切れで、ホール入口付近には“チケット求む”の人たちがずらりといて、我々も何人からか声を掛けられたが、お譲りするわけにはいかない。

プログラムは16~18番Op.31の3曲と28番Op.101……4曲とも未聴である。

一音聴いて、違う音楽を聴いたのではと思うほど、雰囲気が違ったのだ。日本のコンサートホールともまったく空気感が違う中で、演奏されるベートーヴェンは、ここの場所で演奏されるのが当然といった様子を感じさせた。

相変わらずピアノ演奏のテクニックはわからなかったが、ブレンデルの奇を衒わない音楽づくりとその一つ一つに反応するウィーンの聴衆。ああ、これは、この瞬間でしか味わうことができないのだろうなと、その場に居合わせた幸運に感謝したのである。

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