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逢話§トリスタンとイゾルデ~新国立劇場~ [オペラ]

ワーグナーの作品の中で、一番観た回数を重ねているのが『トリスタンとイゾルデ』で、この日で22回目を数えた。白状するが、観始めた最初の半分以上は、何を聴いているのか、まるでわかっていなかったようだった。

おぼろげに見えてきたと感じたのは、1997年バイロイト音楽祭。ハイナー・ミュラー演出、バレンボイムの指揮。トリスタンはジークフリート・イェルザレム、イゾルデがワルトラウト・マイヤーという伝説の舞台。

……という前史のおかげで、ようやくトリスタンとイゾルデが何とか手の内に入ってきた時には古稀を迎えていたという。

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指揮:大野和士
演出:デイヴィッド・マクヴィカー

トリスタン:ゾルターン・ニャリ
マルケ王:ヴィルヘルム・シュヴィングハマー
イゾルデ:リエネ・キンチャ
クルヴェナール:エギルス・シリンス
メロート:秋谷直之
ブランゲーネ:藤村実穂子
牧童:青地英幸
舵取り:駒田敏章
若い船乗りの声:村上公太

合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京都交響楽団



大野和士指揮の都響は、危なげなく安定したまじめな演奏。それゆえ『トリスタンとイゾルデ』の毒のある耽美的な陶酔感というところまでは行かず、サラサラとあっさりしたオーケストラ。そして歌手陣もまた、丁寧な歌唱を聴かせてくれた。

トリスタンもイゾルデも、当初発表された歌手がキャンセル。そうした中でゾルターン・ニャリのトリスタンが悲劇的な騎士を表現していたと感じる。リエネ・キンチャのイゾルデも悪くはなかったが、ニャリのトリスタンが印象深い。シュヴィングハマーのマルケ王、シリンスのクルヴェナールも文句ない歌声。

藤村実穂子のブランゲーネは、変わらぬ誠実な歌いぶりだったが、演技には生硬なものがあった。まあ……歌手の動き全般については、特にどうのこうのと云々するほどのことはなかったのだが。

それにしても、2010~11年シーズンに上演された舞台の再演とは。やはり、新演出された舞台を上演してほしいのだ。

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終演は19時20分で予定より5分ほど早かった。それほど速い演奏とは思えなかったけれど。劇場を出た後は、隣のオペラシティで夕食を済ませ、21時半前には帰宅。

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