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毒話§腹は減ってもひもじゅうない [歌舞伎]

歌舞伎『伽羅先代萩』の通称“まま炊き”の場面、若君鶴千代と乳人政岡の一子千松の会話の中で、千松が「おなかがすいてもひもじゅうない」と弱々しい声で“つぶやく”場面がある。

そういえば“ひもじい”も空腹であるという意味なのだが「お腹が空いても空腹じゃない」と直訳するならば、ずいぶんと奇妙な意味になってしまう。

そうなると、ここにおける“ひもじい”は、どのような表現なのかと考えてみた……おそらくは「お腹が空いてもみじめではない」あたりが妥当だろうかと思われる。

“みじめ”のところには、他に“侘しい”とか“不憫”といった言葉が入るかもしれないけれど、そこまで考えればまあ……それなりに納得いくのだ。

歌舞伎を観ていると、その時代の言葉遣いに出くわして、そんな風に使っていたのかと感心することがある。例えば“すてき”という言葉だが、今時の使い方としては、肯定的な表現だけになってしまっているところ、ある芝居で、あばら家に入った浪人が「すてきに汚いねえ」と言うのを聞いて驚いたことがあった。

そうして言葉は、しなやかに変化していくのである。

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