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逍話§最後の登山靴 [尾瀬]

今履いているのは、登山靴というにはいささか大げさな、浅めのトレッキングシューズみたいなやつである。おそらく最後の山靴になるだろう。

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登ろうと思えば――登らないが――燧ヶ岳や至仏山ぐらいなら無問題だし、真っ平らな尾瀬を歩くには十分過ぎるのだ。

アルバイトをしていた頃は、身分不相応なくらい足首までの立派な登山靴を履いていたが、まさに“宝の持ち腐れ”というやつだった。

その後、しばしのブランクがあって、久々に山靴を新調したのが定年退職で尾瀬行をした時。あまり大げさな靴は……と考えて選んだのが、写真にあるようなタイプの靴である。

重さもほどほど、そして足首の下までの靴なので、足首の自由が利いてくれるのはありがたい。そしてまあ“身分相応”かなと思う。

尾瀬ヶ原を歩くのであれば、ウォーキングシューズ程度のほうが楽といえば楽なのだが、ほんの少々とはいっても、山道のようなところも歩くわけで、そんな時に雨に降られでもしたら、さすがに困ったことになってしまう。いくら楽な山とはいっても、足回りはきちんとして臨むのに越したことはないのだ。

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