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石話§六月大歌舞伎昼の部~壱太郎のおとく~ [歌舞伎]

不思議な吃又を観たと感じた。今まで何度も観てきたのと違う“猿之助型”と言われるバージョンである。

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幕が開いて土佐将監閑居の場。通常なら百姓たちが虎を追い詰めるところ、いきなり又平とおとく夫婦が花道から登場。ひとしきり土佐の名前を欲しいという件の後、百姓たちと虎が出てくるというもの。

そして先々も、通常バージョンとはずいぶん異なる舞台が展開していった。

まず中車の又平をどう捉えたらいいのか、自分の中で整理がつかない部分があちこちにあって……それは他の役者が又平を務める時もそうなのだが、抑え目な演技をする役者と、オーバーアクション気味に演じる役者といるが、中車は過剰と思えるほどの又平を務めたが、やり過ぎと考えるか、それとも又平の心情を彼なりに理解した上での演技となったのか……。

壱太郎のおとくが上々の出来。又平に寄り添って、中車への好サポートと言えるだろう。時折、夫婦して大仰になるところもないではなかったが、それは許容の範囲である。大頭の舞では壱太郎のおとくが自ら鼓を打っていたが役者であれだけ打てればたいしたものだ。

そして何といっても歌六の土佐将監がしっかりしていて、舞台の重しとなって存在感を示していた。そして通常は北の方が出るところを、猿之助型では下女が登場……今年93歳となったばかりの寿猿が達者に務めたのは何より。

団子の修理助は遠慮がちというか、やや物足りず。むしろ、歌昇の雅楽助がきっぱりとしたらしい出来。義太夫は葵太夫が出ずっぱりで語ってくれた。

二幕目『浮世又平住家』は、銀杏の前を追ってきた四天王が大津絵から抜け出した藤娘や座頭と立ち回りを繰り広げるという猿之助型の趣向。猿弥の座頭、笑也の藤娘、新悟の鯰、青虎の奴。とはいえ中身は薄い。

傾城反魂香の後は『児雷也』と『扇獅子』……わざわざ観るほどのことはなく“追い出され”たほうがよかったか。

終演後は新宿に戻って久々に天麩羅でビールと日本酒を楽しんで帰宅した。

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