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異話§玄鳥至~七十二候~清明 [七十二候]

清明の初候“玄鳥至(つばめきたる)”である。

ツバメが来訪してきたのをこの眼でしみじみと実感させられたのは、今から45年前、宮仕えがスタートし、3週間ほどの社内教習に続いて、外部研修と称し、各人がてんでんばらばらに“丁稚奉公”させられた時のことだった。

研修が始まって3日目くらいだっただろうか、職場の階段踊り場の窓の外を一羽のツバメが軽やかに飛び去っていったのを眼にしたのだ。

その様子があまりにも鮮やかだったので、半世紀近くが経った今でも、こうして記憶に残っているのである。

先々の会社生活など、漠然ともいえないレベルでしか考えられず……まして37年後に定年退職して高齢者と呼ばれる境遇になるなど、二十代前半の弱輩に想像などできるはずもなく、将来設計だなどと漠然とすら描けるものでもなかった。

23歳って……若かったんだよなあ。

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