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美話§藤村実穂子[東京文化会館小ホール] [クラシック]

何度も何度も聴いてきた藤村実穂子の歌曲リサイタルは……これまで紀尾井ホールで行われていたのが、上野は東京文化会館小ホールでの開催。

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プログラムは以下のとおり。ピアノ伴奏はヴォルフラム・リーガー。

モーツァルト:

静けさは微笑み Kv.152
喜びの鼓動 Kv.579
すみれ Kv.476
ルイーゼが不実な恋人の手紙を焼く時 Kv.520
夕べの想い Kv.523

マーラー:『さすらう若人の歌』

恋人の婚礼の時
朝の野を行けば
胸の中には燃える剣が
恋人の二つの青い眼

**********************休憩**********************

ツェムリンスキー:『メーテルリンクの詩による6つの歌』 Op.13

三人姉妹
目隠しされた乙女たち
乙女の歌
彼女の恋人が去った時
いつか彼が帰ってきたら
城に来て去る女

細川俊夫:2つの日本の子守唄(日本民謡集より)

五木の子守唄(熊本県民謡)
江戸の子守唄(東京都民謡)

[アンコール]
ツェムリンスキー:

子守唄
春の日
夜のささやき

冒頭のモーツァルトから、磨き上げられた声がホールの空間に満たされた。“いつもの”流れからするなら、最初のモーツァルトは声慣らしの位置付ける人が多く、どこかまとまりがなく物足りなかったりするのだが、この日のモーツァルトは、そうした流れなどではなく、声もしっかり出て……という以上に完成度が高く、いきなり腹一杯になってしまいそうだった。

紀尾井ホールで聴いた時、何がなし“?”と感じるようなこともなくはなくて、不完全燃と感じていたのだが、この日は、そうした不満を一気に吹き飛ばす、どこか“吹っ切れた”ようなステージだったのである。

続くマーラーは、さらにモーツァルトの好調を維持した上、さらに細部に磨きをかけて、彼女らしい細やかさが発揮されたのだ。

言うまでもないが、彼女に合わせるリーガーの伴奏が、精妙にして絶妙かつ融通無碍で、二人の合わせ技の見事さよ。

後半は、初めて聴くツェムリンスキーと細川俊夫が編曲した日本民謡2曲。日本民謡は、いかにもな節回しの自然さを感じ、確かな日本語歌唱を堪能することができた。

アンコールはツェムリンスキーが3曲……“Schlaf(眠る)”という単語が出てきて、彼女の「そろそろ終わり」というメッセージということか。

実は、上野に来るまで年齢的な衰えがあるのではと不安を抱きながらだったのだが、そんなことなど微塵も感じさせない、最初から最後まで誠実そのもののステージを見せてくれたのである。

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