泡話§焼酎のおもひで [酒]
初めて焼酎を口にしたのは、尾瀬の山小屋でアルバイトをしていた時のことだった。
同じセクションで働いていた20歳ほど年長の人と、同じ部屋で2か月ほど寝起きした時、晩飯を済ませて後は布団に潜り込むばかりになっていた直前、その人が、焼酎の一升瓶と、やかんになみなみと入れた湧き水、それにレモンを持ちだして一言……
「呑む?」
……と誘ってきた。まだ二十歳そこそこ、それまで焼酎を口にしたことはなく、どう呑んだらいいのかもわからなかったが、注がれた焼酎に湧き水を足してレモンを搾って呑んだら、まるで水の如くで、何の癖もなくスルスルと呑めてしまった。
「う、うまいっすね」と言えば、ボソッと「な……」と短い言葉が返ってきたのだ。
そんなアルバイトを続けていたある日、体調を崩して山から下りていった。夏のシーズンも終わり近かったから、男手は自分一人で何とかこなすことになったが、その人が尾瀬に戻ってくることはなく、肝臓をやられて半年ほどで帰らぬ人となってしまったのである。
《酒のトピックス一覧》
同じセクションで働いていた20歳ほど年長の人と、同じ部屋で2か月ほど寝起きした時、晩飯を済ませて後は布団に潜り込むばかりになっていた直前、その人が、焼酎の一升瓶と、やかんになみなみと入れた湧き水、それにレモンを持ちだして一言……
「呑む?」
……と誘ってきた。まだ二十歳そこそこ、それまで焼酎を口にしたことはなく、どう呑んだらいいのかもわからなかったが、注がれた焼酎に湧き水を足してレモンを搾って呑んだら、まるで水の如くで、何の癖もなくスルスルと呑めてしまった。
「う、うまいっすね」と言えば、ボソッと「な……」と短い言葉が返ってきたのだ。
そんなアルバイトを続けていたある日、体調を崩して山から下りていった。夏のシーズンも終わり近かったから、男手は自分一人で何とかこなすことになったが、その人が尾瀬に戻ってくることはなく、肝臓をやられて半年ほどで帰らぬ人となってしまったのである。
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