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技話§十二月大歌舞伎~たぬきと阿古屋~ [歌舞伎]

市川中車の『たぬき』に始まり、玉三郎の『保名』を挟み、児太郎の『阿古屋』という十二月大歌舞伎昼の部を観てきた。

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“おじさん”と呼ばれる菊五郎をはじめとするベテラン大看板が七十代半ばとなり、坂東玉三郎も来年には齢七十となる。2012年12月、十八代目中村勘三郎の死に始まった何人かの大看板逝去の影響は少なくなく、この数年来は若手を引っ張り上げる動きが積極的かつ急ピッチだと感じるが、自分自身が生きている間に、その精華に間に合うだろうかと気を揉んでいる。

昼の部の一本目は大佛次郎が書いた『たぬき』で、深川十万坪の火葬場の棺桶から生き返って別の人生を歩こうとする柏屋金兵衛を中車が務めた。

これまで、故三津五郎の金兵衛で二回観ていて、今回の『たぬき』は、少し固めでこなれきっていないと感じたが、おそらく中車の抑制した演技のゆえではなかったか。そのあたりが修正できれば中車の演技力が十全に発揮される役回りだろう。

ブラックユーモア満載な脚本を、役者がどのように料理してお客さんに見せようとするか……そういう意味では、もう少し肩の力を緩めてもよかったような気がする。

ある時期に立て続けに観た『保名』は、恋人に先立たれた男が物狂いして彷徨う20分ほどの舞踊だが、今回も玉砕。やっぱり漂うだけの踊りはだめだ。

そして『壇浦兜軍記―阿古屋―』は、玉三郎、梅枝、児太郎が交代で務める趣向だが、もちろん“玉三郎が後継者を育てる月間”ということでもある。

……個人的に『阿古屋』は芝居として興味を惹かれる類ではなく、琴、三味線、胡弓を舞台上で主役が演奏する“女形の難役”と言われても、それほど観たい観たいと渇望するような演目ではない。

とはいえ、児太郎は楽器三種を無難に弾き切ったが、それ以上の感慨はないままに幕。

15時頃の終演は、いつもよりは早めだったおかげで、途中のデパ地下で酒肴や晩飯の総菜などなどを買い揃え、17時前には帰宅。

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