銀話§『ばらの騎士』東京交響楽団[ミューザ] [オペラ]
第一幕の前奏曲が終わりかかるところで6台のコントラバスがピチカートで“ブン!”と一発鳴らしたところで涙腺が緩んでしまった。

旅行先のウィーン、ミュンヘン、ドレスデン、ベルリン、そして国内では、1994年、あのクライバー&ウィーン国立歌劇場の伝説の公演と回数を重ね、我が人生も終わりに近づきつつある古稀の年に聴いた『ばらの騎士』の見事だったこと。
指揮:ジョナサン・ノット
東京交響楽団
演出監修:サー・トーマス・アレン
元帥夫人:ミア・パーション
オクタヴィアン:カトリオーナ・モリソン
ゾフィー:エルザ・ブノワ
オックス男爵:アルベルト・ペーゼンドルファー
ファーニナル:マルクス・アイヒェ
マリアンネ/帽子屋:渡邊仁美
ヴァルツァッキ:澤武紀行
アンニーナ:中島郁子
警部/公証人:河野鉄平
元帥夫人家執事/料理屋の主人:髙梨英次郎
テノール歌手:村上公太
動物売り/ファーニナル家執事:下村将太
合唱:二期会合唱団
これほどの演奏が2回の演奏会だけで終わってしまうことの虚しさのようなものを感じずにはいられない。
歌手陣も悪くはなかったのだが、第一幕については、我々が聴いた4階席には声が飛んでこず、オーケストラに塞がれてしまった……二幕、三幕と進むにつれてオケを突き抜けて声が届くようになってくれた。印象に残ったのはゾフィーのエルザ・ブノワの特に高音の音程の確かさ、ファニナルのマルクス・アイヒェの演劇的な歌い回し。
だが、今公演の最大のMVPが東京交響楽団であることは言うまでもない。そして驚いたのは第三幕前奏曲のクォリティの高かったこと、何の不安も感じさせず、厄介で細かい音楽をニュアンス豊富に、しかも危なげなく仕上げて聴かせてくれたのだ。
多くの人が“1994年の『ばらの騎士』の呪縛”について口にするのだが。あれはもう、どうだこうだと論評するような類の公演ではなく、我々が勝手に呪縛されても詮のないことではないかと思うようになった。そして“あれ”はもう別世界の存在なのであろう。
そうであるがゆえに、あれから30年経った今、我々はまた“一つ”のかけがえない『ばらの騎士』を手に入れたということなのか。
↓カーテンコールで“子どもたち”にちょっかい出されているオックス

《クラシックのトピックス一覧》

旅行先のウィーン、ミュンヘン、ドレスデン、ベルリン、そして国内では、1994年、あのクライバー&ウィーン国立歌劇場の伝説の公演と回数を重ね、我が人生も終わりに近づきつつある古稀の年に聴いた『ばらの騎士』の見事だったこと。
指揮:ジョナサン・ノット
東京交響楽団
演出監修:サー・トーマス・アレン
元帥夫人:ミア・パーション
オクタヴィアン:カトリオーナ・モリソン
ゾフィー:エルザ・ブノワ
オックス男爵:アルベルト・ペーゼンドルファー
ファーニナル:マルクス・アイヒェ
マリアンネ/帽子屋:渡邊仁美
ヴァルツァッキ:澤武紀行
アンニーナ:中島郁子
警部/公証人:河野鉄平
元帥夫人家執事/料理屋の主人:髙梨英次郎
テノール歌手:村上公太
動物売り/ファーニナル家執事:下村将太
合唱:二期会合唱団
これほどの演奏が2回の演奏会だけで終わってしまうことの虚しさのようなものを感じずにはいられない。
歌手陣も悪くはなかったのだが、第一幕については、我々が聴いた4階席には声が飛んでこず、オーケストラに塞がれてしまった……二幕、三幕と進むにつれてオケを突き抜けて声が届くようになってくれた。印象に残ったのはゾフィーのエルザ・ブノワの特に高音の音程の確かさ、ファニナルのマルクス・アイヒェの演劇的な歌い回し。
だが、今公演の最大のMVPが東京交響楽団であることは言うまでもない。そして驚いたのは第三幕前奏曲のクォリティの高かったこと、何の不安も感じさせず、厄介で細かい音楽をニュアンス豊富に、しかも危なげなく仕上げて聴かせてくれたのだ。
多くの人が“1994年の『ばらの騎士』の呪縛”について口にするのだが。あれはもう、どうだこうだと論評するような類の公演ではなく、我々が勝手に呪縛されても詮のないことではないかと思うようになった。そして“あれ”はもう別世界の存在なのであろう。
そうであるがゆえに、あれから30年経った今、我々はまた“一つ”のかけがえない『ばらの騎士』を手に入れたということなのか。
↓カーテンコールで“子どもたち”にちょっかい出されているオックス
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