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昏話§クラシック喫茶なるものが[下] [クラシック]

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さて、頻繁に足を運んだのは中野の“クラシック”という喫茶店であった。これがいつ崩れ落ちてもおかしくない、中に入ると素人普請ではないかというような傾いた階段や2階の床……中野駅北口を出て、中野ブロードウェイ手前の路地にあった。

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店の中は薄暗いので、うっかり踏み外したらやばいという、迷宮のような店内だが、これが何とも居心地がよく、一度行ったら病みつきになってしまったのだ。

というわけで、お世辞にもきれいとはいえない店内に妙なる楽曲が流れて、そんな中でコーヒーを啜るのだが、その当時コーヒー1杯150円は、貧乏学生にはありがたかった。そしてミルクピッチャーとして使われていたのは赤いマヨネーズの蓋、お冷やが入っているのはワンカップ大関のそれだった。

入り口を入ってすぐ、小さい黒板が置かれていて、客がリクエストを書き込むようになっていた。黒板のスペースはすぐ一杯になってしまうから、我慢強く待つのである。

当然ながら2時間くらいはあっという間に過ぎてしまい、ようやく自分がリクエストした音楽が流れだす。そしてコーヒーをもう1杯。

クラシックに通っていたのは2年かそんなものでしかない。大学帰りのついでの寄り道で、行けたのは月に一回もあったかどうか……画家でもあった店主は1989年に逝去。家族が後を継いだが、その家族も亡くなり、クラシックが閉店したのは2005年のことである。

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