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旅話§オペラハウスの引っ越し公演の黄昏 [オペラ]

最後に観た海外オペラハウスの引っ越し公演は、2013年9月のミラノ・スカラ座『ファルスタッフ』だったので、おおよそ10年近く引っ越し公演を観ていないことになるようだ。

1980年のカール・ベーム&ウィーン国立歌劇場来日公演以来。ざっと数えてみたら、延べ50団体にもなっていた。ヨーロッパの主要歌劇場……ミラノ、ミュンヘン、ベルリン、ハンブルク、ウィーン、コヴェントガーデン、アメリカのメトロポリタンなどなどである。

1980年から1990年代にかけて、そうした大歌劇場が、一度の来日でオペラ4演目を持ってきていた。まさに壮観そのもので、それらを可能な限り観て観て観まくったのだった。中には初めて観る作品もあったりしたが“誰でも、最初は初めて”とばかりに、果敢に挑戦しては討ち死にしていたのだった。

そのように各歌劇場が覇を競い合ったオペラの引っ越し公演は、バブル崩壊から緩やかに退潮基調となって、3公演から2公演へと規模は縮小し、それまで一か月以上も滞在していたのが、20日ほどで帰っていくようになったのだ。

そんな引っ越し公演を観続けた我々夫婦にとっての白眉は、言うまでもなく1994年、カルロス・クライバーがウィーン国立歌劇場を指揮しての『ばらの騎士』だったのである。

しかも7回も公演を重ねたのだ。我々も必死に資金を調達して、そのうちの3公演を観に行った。その3回が3回とも、違って聴こえたが、そのどれも心に深く刻み込まれたのだった。

その後、バレンボイム率いるベルリン国立歌劇場が『ニーベルングの指環』四夜通し上演という巨大なプロジェクトを実現させたが、その先は、徐々に黄昏ていくばかりと感じ、少しずつオペラ熱も冷めていったのだ。

ただ言えることは、およそ30年ほどの引っ越し公演を鑑賞していた間は、まさに居ながらにして贅沢を享受できた30年だったのである。そして今の日本にはそんな体力が失われていることに気がつく。

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