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酪話§バタークリームなるもの [スイーツ]

幼少のみぎり、ケーキを食べられるのはクリスマス……そう決まっていたようだ。

だが、楽しみであるはずのケーキを根底から台無しにした存在が“バタークリーム”だったのである。言うまでもなく、ホイップした生クリームとは別物で、数十年前は高級品にのみ生クリームが使われていたのである。

ゆえに我が家の食卓にあるのは、手頃な値段のバタークリーム仕立て。食感はというと、バターを柔らかくした舌触りで、それが甘いのである。だからどうも、バターみたいなものを食べているなという感じがして、好みだとはとても言えるものではなかった。

でまあ、渋々食べるわけだが、何とか喉を通しても、その後にやって来るのは胸焼けみたいなもので、これはもう食べたことのある人間でなかったら、わかるものではないと思われる。

そうして、ずいぶん経ったところでようやく生クリームのケーキを口にできたのだが、ころぞまさに“世の中にこれほどうまいものが存在するのか”のお手本のような、この世のものとは思えない、うまさの極致であったことを鮮やかに思いだすのだ。

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